2014/08/05(火) 23:59 【 EDIT

8月5日(火)

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■佐倉みさき/8月5日/15時

 ノイマンは朝方まで仕事をしていたようだった。たまに小さな唸り声をあげながら、ずっとノートPCを叩いていた。
 それを見越してか、ホテルは昼ごろのチェックアウトでよいプランだった。
 正午になるころにホテルを出た私とノイマンは、喫茶店で適当に時間をつぶして、ランチのピークが過ぎた14時ごろにみそかつを食べた。とてもおいしい。でも私の好みでは、もう少しだけ薄味の方が嬉しい。
「名古屋城でもみにいく?」
 と気楽にノイマンがいう。まるで普通の旅行みたいに。
「疲れてますよね?」
 と私はつい尋ね返す。
 彼女はあくびをかみ殺して、「まあね」と答えた。
「締め切りは終わったんじゃないですか?」
 先週の土曜日――あの、食事会の日が締め切りだと、彼女は言っていた。
 ノイマンは小さな声で、んー、と唸る。
「今はテストプレイ版を作って、それを触ってもらって問題点を修正して――って工程なわけよ。だからわりと小まめに締め切りがあるの」
「テストプレイ版、ですか」
「そ。今も聖夜協会のドイルってひとがテストプレイしてくれてるらしいわ」
「ドイル」
 コナン・ドイルだろうか?
 そんな人がテストプレイをしたら、あらゆる問題を見つけ出しそうではあった。
「私はある程度バグに対応して、もう少し先までプレイできるデータを用意しないといけないの。その締め切りが、今週末」
 なかなか大変そうだ。
「私と一緒にみそかつを食べていていいんですか?」
「いいに決まってるじゃない、昼食もとらずに働けっていうの?」
 そんなわけではないけれど、無理にこちらにつき合わせているようで申し訳ない。
「締め切り、大丈夫なんですか?」
「ま、なんかはできるわよ。今はあくまで内輪向けのテスト版だから、完成度には拘らないわ」
 彼女がそういうのを聞いて、私は疑問に思う。
「ゲームみたいなものを作ってるんですよね?」
「みたいなものっていうか、まんまゲームね」
「それ、なんのために作ってるんですか?」
 今はあくまで内輪向け、と彼女は言った。
 最終的には、外に向かって公開される予定なのだろうか?
 ノイマンは口元で笑う。
「それは内緒」
 わからない。
 どうして、聖夜協会がフリーゲームを作る必要があるんだろう。

       ※

 15時になるころに、私たちの目の前にニールが現れた。
 彼の姿は今朝からみえなかった。本当に瞬間移動できるなら、ついさっきまで地球の裏側にいたとしても、エアコンが効いた自宅の部屋でだらけていたとしても不思議ではない。
「どこに行っていたの?」
 とノイマンがいう。
 ニールは面倒臭そうに、「しゃちほこ見て来た」と答えた。意外と普通に名古屋を観光していたようだ。
「名古屋城?」
「そうだよ」
「かち合わなくてよかったわ」
「まったくだ」
 ニールはノイマンに、新幹線のチケットを差し出す。
「そろそろ行くぞ。けっこう移動に時間がかかる」
「貴方なら一歩でしょ」
「オレはな、新幹線の座席でコーヒーを飲むのが好きなんだよ。意外と美味い」
 飽きたら先に行ってるさ、とニールは言った。
 私は尋ねる。
「どこに行くんですか?」
 ニールは面倒くさそうに、「秋田」と答えた。


【3D小説『bell』運営より】
・この数日、ツイッターで「#3D小説」を検索してもうまく表示されない(数日前までの検索結果しか得られない)
 という事態が発生しているようです。今回はその対処についてアナウンスいたします。
Yahoo!リアルタイム検索をご利用いただくと、ツイートの履歴をみられるようです。
 (MIROさんからご紹介いただきました!)ハッシュタグがうまく使えないときには、お試しください。
・また、読者のみなさまが「#3D小説」のまとめ(togetter)を作ってくださっています!
 「まとめのまとめ」のページがありますので、紹介させていただきます。togetter.com/li/696727
・ハッシュタグ検索は「#3D小説 -立体視」という風に打ち込むと、
 「『立体視』を含まない#3D小説のツイート」を 検索できる、という機能があるのですが、
 これを使うと抜けのない、正確な検索結果が得られるみたいです。
 検索でお困りの方は、「#3D小説」からお好きな(滅多に使われていなさそうな)言葉を引いて
 検索してみてはいかかでしょう?「#3D小説」の後ろに、半角スペース、マイナス、ひきたい言葉です。
・ただし同じ言葉を「〇〇〇」に当てはめて繰り返し検索すると、やっぱり同じ障害が発生することがわかりました。
 例えば、以前のツイートでは「〇〇〇」に「立体視」を当てはめてご紹介したのですが、
 今は「立体視」では うまくいかない場合もあるようです。
 (あれ?「 -〇〇〇」を使ってもうまく検索できないな)と感じた方は、当てはめる言葉を変えて試してみてください。

■久瀬太一/8月5日/21時30分

 今日はホテルからでるな、と八千代にいわれていたので、オレは一日部屋にこもって過ごした。
 目の前に問題があるとわかっているのにじっとしているのは、あまり気持ちのよいことではなかった。無暗に動き回って誰かに迷惑をかけるよりはずっといい、と自分に言い聞かせる。
 八千代は昼過ぎごろ、どこかに出かけたようだった。
 彼は21時30分になるころに、夕食の弁当を持ってオレの部屋を訪ねてきた。よくみかける全国チェーンの弁当屋のものだ。
 買ってきたのは和風の幕の内弁当と中華風の弁当で、じゃんけんに勝ったオレは幕の内の方を選ぶ。たまに食うとけっこう美味い。
「コンビニの弁当も悪くないが、米がいまいちでね。こっちの方がいい」
 と八千代が言う。
「同感だよ」
 オレは頷く。
「とはいえ、今重要なのは飯の話じゃないだろう?」
「ああ。とりあえず、オレたちを見張っている連中について調べた」
「どうだった?」
「尾行は上手くない。専門家じゃない。でも厄介な点もある。そこそこ人数がいるから全員を特定するのは困難だし、オレがひとりでぶらぶらしていてもなんのアクションも起こさなかった」
「それが、厄介な点なのか?」
 甘酢あんかけの肉団子を食いながら、八千代は頷く。
「向こうは標的を君にしぼっている。あるいは、こちらをしばらく泳がせておくつもりだ。どちらにせよ対処に少し時間がかかる」
「大丈夫なのか?」
「なんとかするよ。相手の狙いを絞れれば、罠だって張れる」
 なんにせよオレは、黙って待っているしかないわけか。
 まだ頭から信用する気にはなれないが、少なくとも八千代がいて、ずいぶん救われるなと思った。彼のおかけで、いくらかは冷静でいられる。
 オレも八千代も、ものの5分ほどで夕食を終えた。互いに飯を食うのは早い。
 八千代は食後のキャンディをなめながら、ブラックのコーヒーを飲んでいた。
 オレはベッドに寝転がる。と、耳元に置いてあった、スマートフォンが震えた。
 ――ソルのスマートフォンだ!
 電波が、入った?
 オレは慌ててそれをひっつかむ。が、違う。
 左上の表示はやはり圏外のままだ。
 なら、今までのパターンでは、届くメールは決まっている。
 ――制作者からだ。
 オレは一通だけ届いていたメールを開く。

       ※

 青と紫の節、9番目の陰の日に、このページが君を救うだろう。
 http://j.mp/korede_kanpeki

       ※

 青と紫の節、9番目の陰の日。
 その言葉には、聞き覚えがあった。
 あのドラゴンに食われる、わけのわからない未来だ。
 オレはそのアドレスをクリックする。
 ――だが。
 表示されたのは、奇妙なエラーメッセージだった。

 あなたはまだ、このページを閲覧する権利がありません。
 青と紫の節、9番目の陰の日をお待ちください。

 なんだ、それ。
「どうかしたのかい?」
 と八千代が声をかける。
 スマートフォンを放り出して、オレは首を振る。
「いや。なんでもない」
 そういえば、あのドラゴンの前に立っていたオレは、スマートフォンを覗き込んでいた。
 ――このページを、みていたのだろうか?
 いったい、なにが載っているというのだろう?
 アドレスは、これで完璧、と読める。
 馬鹿げたアドレスだと思った。

――To be continued


★★★「愛媛の愛情100%」管理人からの情報
 →雪もshiroデザイン事務所の名前も聞いたことがない。
 21歳で高校から県外。部活未所属だが本をよく読んでいた。
 →久瀬という名前の男の子は、弟の友達にいたような気がします。
 タイムカプセルは弟が友達たちと、うちの実家の山に埋めたのは確か。
 どういう話の流れで埋めたのかは聞いていない。タイムカプセルを掘り返した話は聞いていない。

【愛媛の愛情100%】8/5「弟のタイムカプセルについて」:http://ponthe1.hatenablog.com/entry/2014/08/05/232159

・弟のタイムカプセルについてやりとりするための専用記事。
・弟は21歳。タイムカプセルを埋めたのは、小学3年生か4年生のころだったかな、たぶん。


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