2014/12/23(火) 12:11 【 EDIT

『アルベルトの視点』

アルベルトの視点1 
※アルベルトの視点:札幌(北海道)「三省堂書店 札幌店」にて発見。

 目下の問題は英雄の体調だ。
 --このテキストを、あなたは確認できて
いるだろうか?
 物語は強い制限を受けている。
 ルールによって。
 この表現が通ることは確認されている。
 ●●によって。
 これは?おそらく通らない。
 ●●●●●●●●によって。
 必ず制限される。

 現状、すべてはただの物語として進行しな
ければならない。

 ※

 空が白い。
 それは冬の色のように感じた。色がないの
に重たく感じる空だった。雪は軽やかに振る
舞っても空よりは重い。だから地上に落ちる。
その色だと思った。北海道にくるのはこれで

三度目だ。
 センセイの招待状が私にまで届いたことは
意外だった。また聖夜協会に戻れというのだ
ろう。私に。言い方を変えるなら、センセイ
の事情を--少なくとも、ある程度は--理
解している私があちら側に戻る必要が生まれ
たのだ。それはもちろん良い傾向ではない。
 私は札幌駅の目の前にあるショッピング
モールに向かう。センセイはそこになんらか
の手がかりを残していく。物語を前に進める

ための。
 スマートフォンが震えた。
 私はポケットからそれを取り出す。それは
冷たくて少し驚く。応答のボタンに触れ、耳
に当てる。短い沈黙。それから声。
「おはようございます」
 戸惑っているような声だ。
 私は応える。
「おはよう」
 男。聖夜協会員のひとりだ。二代目のドイ

ル。
「今はどこに?」
「札幌駅を出たところ」
「そうですか」
 また、短い沈黙。
「なんとなく、貴女は電話にはでないだろう
と思っていましたよ」
「必要なら応じる」
「書店にはなにがあるんですか?」
「まだわからない。到着していない」

「貴女も、知らないんですか?」
「センセイの計画をすべて知っているわけ
ではない」
「では、どうして書店なのかも?」
「推測はできる」
 軽いテストのつもりで、私は応える。
「深い意図はない。おそらく、あの本に近づ
けるためだろう」
「あの本?」
 ここまでは通る。相変わらず、ルールの意

図は読めない。
「なんでもない」
 と私は応える。
 ドイルはしばらく沈黙していたが、深く追
求しても無意味だと考えたのか、話題を変え
る。
「センセイには敵がいるんですか?」
「敵?」
「彼がなにをしているのか、まったく推測が
立たない。お手上げです。でもまあ、みんな

ただの気まぐれだとは思えない」
 確かに彼らからみれば、センセイの行動は
不可解だろう。●●●●●●●●●がルール
として機能しているというのは、少し考えづ
らいことだ。
「敵はいない」
 と私は答える。
「ひとりも敵と呼べる人間はいない」
 あるのは物語と、物語への参加者と、物語
の読者だけだ。

「ならどうしてセンセイは、こんなにもやや
こしいことをするんですか?」
「それはまだもうしばらく公開されない」
「どうして?」
「いずれわかる」
 電話の向こうで小さなため息が聞こえた。
おそらく私に聞かせるためのものだろう。そ
の音は冬の空によく似合っていた。
 ふと思いついて、私は告げる。
「時系列を整理するといい」

「時系列?」
「そろそろ目的地だ」
「ああ、はい。何かわかれば、ご連絡よろし
くお願いしますよ」
 返事をせずに、私は通話を切る。



 センセイが残したものだろうメモはすぐに
みつかった。

 四つの答えが、五つ目の答えを導く。

 ただ一文。それだけだった。
 私はぐしゃりとメモ用紙を丸める。
 それから軽く書店内を見回して、あの本が
ないことを確認した。

四つの答えが、五つ目の答えを導く。


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アルベルトの視点6 アルベルトの視点7 アルベルトの視点8 三省堂書店 札幌店
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